6次産業化に踏み出すには〈土地利用型農業での取組事例を参考に〉

 今回は、6次産業化を実践している県内の先進農業者の取組を通じて、新たに加工や販売に取り組む際に重要なことを掘り下げてみたいと思います。

【加工を外部委託する6次産業化】

 
Aさんは、米、麦、大豆、そば、露地野菜で大規模土地利用型の農業を営んでいます。
 
 6次産業化に挑戦したのは7年ほど前のこと。
  今では、自ら生産した農産物を原料としたうどんやそばなどを道の駅や直売所、直接取引などで販売しており、これら加工品の売上げは、農産物と合わせた総販売金額の約1割を占めています。

 Aさんの6次産業化の特徴は、自ら加工施設を整備して加工するのではなく加工技術を持つ食品企業に製造を外部委託して、それを自ら販売するというところです。

 

図
 【外部委託方式のメリット】

 外部委託方式には、大きなメリットがあります。
 ひとつは加工機器を導入する設備投資が必要ないことです。

 新しい事業に取り組む場合、せっかく設備投資をしても売れなければ全て無駄になってしまいます。

 この点、外部委託は、最低ロットなどの制限がありますが、設備投資に比べればリスクは相当低いと言えます。

 2つめは、外部委託のため、農業者自らが、食品製造に必要な様々な許可や資格などが必要ないことです。加工施設は、一般的に食品衛生法の基準を満たすための許可申請などが必要となる場合が多く、加工する農産物や加工方法によって基準は全て異なるため、法令を理解し十分な準備が求められますが、この必要が全くないというのは、新事業に踏み出すハードルを下げてくれます。

 また、外部委託で加工品を製造し、少しずつ事業を拡大していく中で、製造業者の加工技術のノウハウ、商品表示やラベルの付け方、関係法令などの利知識を習得して、将来の設備投資に備えることや、消費者のニーズや販路の状況を踏まえてビジネスを育てていくことが出来ます。

 このように、何から何まで全て自分で行わず、外部委託を上手に活用して、6次産業化の実践に踏み出すのは、比較的リスクが少なく、加工や販売などのスキルを徐々にアップしていけるメリットもあり、全課程を自ら行うよりは、比較的取り組みやすいかもしれません。

 さて、Aさんの取組をもう少し深く見てみます。


【パートナー企業を見つける、販路を確保する】

 
外部委託方式の6次産業化で最も難しいのは、①パートナーとなる食品企業を見つけること、②適正価格の設定と着実な販路を確保し、拡大していくこと、です。

 「①パートナーとなる企業を見つけること」について、Aさんは、展示商談会、首都圏で行われるマルシェなど、あらゆる機会を利用して自らの取組をPRし、そこで知り合った人的ネットワークの中から、比較的小ロットでも対応可能で、高い加工技術を持つ食品企業探しています。商工会議所にも加入し、今もネットワークを拡げる努力をしています。

 お話を聞いて印象的だったのは、「ようやく見つけた県外の食品加工企業に電話で加工委託をお願いしたらその場では断られたものの、すぐに原材料を持って高速道路を使って会社を訪問、直接折衝の末、加工を請け負ってもらった」という内容でした。

 食品企業も、出来るだけ大口で、継続した相手からの仕事を受けたいと考えるのが普通であり、高い技術を持つ加工企業で、小ロットから請け負うことが可能であって、農業者の思いを汲んで一緒に仕事の出来る会社は、電話帳やインターネットなどではなかなか探すのは難しいようです。

 目指すことを実現するために、幅広いネットワークを築くこと、そして、自分の考えや取組を理解してもらうために直接相手と交渉して熱意を伝えていく行動力や情熱が必要だということかと思います。

 「②適正価格の設定と着実な販路を確保し拡大していくこと」については、まず価格ですが、Aさんは、労賃を含めた農産物の原材料単価を、再生産価格から適正に算出し、さらに外部委託の加工費などを含めて製品の価格を決定しています。

 商品の価値を適正に評価していただける顧客を見つける、というポリシーのもとで販売を開始しましたが、事業開始当初は、全然売れない商品を近所に無料で配り歩くことも多く、やっぱり止めようか、と思うこともあったそうです。

 Aさんは、農産物を観光客の多い道の駅で販売していました。加工品も道の駅を拠点に販売しつつ、前述したようにあらゆる機会を通じて商品の魅力のPRに努めました。

 また、Aさんのこだわった農法に共感して農産物を購入してくれている顧客や、そのネットワークを通じて徐々に販路を広げていきました

 同じ農産加工品でも、大手食品企業との価格競争では厳しいものがありますが、徐々にAさんの商品の強みや商品づくりに込めた思いが理解され、原料や製造にこだわった商品を求める顧客が繰り返し買ってくれるようになったそうです。


【まとめ】

 
今回は、「外部委託」方式で新たな事業に踏み出すハードルを低くし、6次産業化の事業を比較的緩やかに発展させていく方式を、土地利用型農業での取組事例を参考に紹介しました。

 この方式はたくさんのメリットがありますが、パートナー企業を見つけ出すこと、あらゆる機会に人的ネットワークを拡げていくことも成功の鍵を握っているようです。

 参考までに、国が6次産業化の経営発展をイメージとして示したものが下図です。今回ご紹介した事例は、企業的経営移行期から6次産業化確立期に位置づけられる手法と考えられます。

図(国)
 [参考URL]
◇ 6次産業化先進100事例(農林水産省)
  http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/6jika/jirei/index.html

◇ 第6チャンネル(6次産業化に関する様々な情報が入手できます。)
  http://www.6-ch.jp/

 

【問い合わせ先】
栃木県農政部農政課農政戦略推進室
電話:028-623-2284
メール:agrinet@pref.tochigi.lg.jp
または、最寄の農業振興事務所までお問い合わせください。

※ 栃木県農政部の情報は、「とちぎファーマーズチャレンジネット(http://www.agrinet.pref.tochigi.lg.jp/)」や「栃木県農政部ツイッター(http://twitter.com/tochigi_nousei)」でも発信していますので、是非、ご利用ください。

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