今後のイネ縞葉枯病の発生に注意が必要です!

 イネ縞葉枯病(写真1)は、ヒメトビウンカ(写真2)が媒介する稲の重要ウイルス病です。
 栃木県では昭和50年代、県南部を中心に多発し大きな被害を出しましたが、農家の方々や関係機関の努力で防除対策が実を結び、平成に入って終息しました。しかし、近年、発生が再び増加し、被害の拡大が心配されています。

写真1 縞葉枯病(1)

写真1 縞葉枯病(2)

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【上記3枚の写真:イネ縞葉枯病】

 

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【上記写真:ヒメトビウンカ】

 

○平成25年、縞葉枯病が県全体で急増!
  平成25年は縞葉枯病の発生が急増しました。8月下旬~9月上旬調査では調査ほ場の約7割で発生が見られました(図1)。県南部では発生株率10%以上のほ場が増加し、県中部でも県南部と同程度に高いほ場がありました(図2)。県北部も発生ほ場が増え、程度も少しずつ高くなっています。なお、県南部では収穫量が3俵/10a以下といった著しい減収ほ場も見られました。

 図1

 

 

図1 イネ縞葉枯病発生ほ場率の推移(県全体、8月下旬~9月上旬調査)

 

 

 

 リンク:県内各地点のイネ縞葉枯病発生程度(平成25年8月下旬~9月上旬 調査ほ場数:78)

○平成26年、縞葉枯病の発生はどうなる?
 翌年の縞葉枯病の発生を予察するため、毎年11月下旬から12月上旬にかけて、ヒメトビウンカ越冬世代幼虫のイネ縞葉枯ウイルス保毒虫率※を調査しています。
※イネ縞葉枯病ウイルスを獲得し、イネへの本病媒介能力を有するヒメトビウンカの割合

 これまでも、年々保毒虫率は上昇してきましたが、平成25年調査ではさらに急上昇し、県平均で10.9%となりました(図3)。また、同幼虫の生息密度は県平均37.4頭/10㎡(平年比147%)とやや多い状況でした。

 図3

 

 図3 ヒメトビウンカ越冬世代幼虫のイネ縞葉枯ウイルス保毒虫率及び生息密度の推移

 

 

地域別に見ると、県中南部の保毒虫率が高く、その水準になったら防除を行う必要がある要防除水準(保毒虫率10%)を超える地点が多く見られました(表1)。県中南部では平成26年も多発が予想され、これまで以上に防除対策をしっかりと行うことが重要です。なお、県北部においても保毒虫率は徐々に高まっているため、今後の発生に注意が必要です。

表1 ヒメトビウンカ越冬世代幼虫のイネ縞葉枯ウイルス保毒虫率
注:平成25年11月下旬~12月上旬に採取したヒメトビウンカ幼虫を検定。空欄はデータなし。

 表1 

 
【防除対策】
○防除対策は地域ぐるみで行いましょう!
 縞葉枯病対策は広域で行うと効果が高まります。平成26年産稲作に向けて地域ぐるみで防除対策を行いましょう。

[1]抵抗性品種を作付けしましょう
抵抗性品種(とちぎの星・あさひの夢)を作付けします。飼料イネも抵抗性品種(たちすがた・クサホナミ・はまさり等)に切り替えます(表2)。

 表2 主要品種の縞葉枯病抵抗性
表2

  
 

 

 

[2]ヒメトビウンカの防除を徹底しましょう
①縞葉枯病の発生が多い県中南部では、罹病性、抵抗性品種を問わずヒメトビウンカに効果のある箱施用剤を使用します(表3)。県北部では罹病性品種を作付けする場合にのみ使用します。
※県内ではプリンス粒剤等(殺虫成分フィプロニル)に対する薬剤感受性が低下したヒメトビウンカが確認されています。同剤はヒメトビウンカ防除の効果が劣るので、使用しないでください

②縞葉枯病の発生が多い県中南部では、箱施用剤とあわせて早植で6月上~中旬、普通植で7月上~中旬に本田防除を行います。なお、本田防除剤は箱施用剤と同一薬剤・系統を避けてください(表4)。

③再生稲はイネ縞葉枯ウイルスの伝染源やヒメトビウンカの生息地となるため、収穫後はすみやかに、また丁寧に耕起してください。

リンク: 稲(箱育苗)のウンカ類に登録のある主な薬剤(平成26年1月20日現在)
リンク: 稲のウンカ類に登録のある主な薬剤(平成26年1月20日現在)  
★農薬はラベルの表示を確認して正しく使用してください。

図4 ヒメトビ生活環と対策

 

 

 

 

 

 

  図4 ヒメトビウンカの生活環と縞葉枯病防除対策

※縞葉枯病の発生状況や防除薬剤については、農業環境指導センター「植物防疫ニュース」で、随時発信しています(URL:http://www.jppn.ne.jp/tochigi/index.html)。

経営改善に当たってのキャッシュフロー活用!!

「一年の計は1月にあり」。昨年1月に出したブログの表題です。その中では、「決算書を踏まえながら技術を反省していくことが重要ですね」と、書かせていただきました。
【前回のおさらい】 
経営規模の現状維持の中では、販売量を増やすか品質(販売単価)を上げれば、売上高が伸びます。そこで、
 ◆販売量を増やすため単収を増やせるよう、肥培管理や栽培管理(病害虫防除、作業効率)、手が回らなかった点を家族と話し合いましょう。
 ◆品質(販売単価)を上げるため優品率低下や出荷時期の遅れなど伝票などから読み取り、改善策を検討しましょう。
 つまり、いかに栽培管理技術を高めるか、安定させるか、そしていかに単価の高い優品を沢山作るか、価格の高い時期を見極めて出荷できるか、などがポイントとなります。

 

 では規模拡大、新たな事業導入での投資を行う場合”には、どういうことを検討することが必要なのでしょうか?
 これについて、ポイントは以下のとおりです。
【今回のポイント】
 規模拡大や新たな投資を行う場合には
「経営内に現金がどれだけ残っているか」という見方「キャッシュフロー(現金流量)」を捉えます。あわせて、償還額(借入金の返済額)の計算をします。この投資効果>償還額となるかどうかを調べ、採算のとれる投資計画とすることが大切です。
 
なお、新規事業は独立採算でまずは計算してみることが重要です。
 その上で、投資計画が現在の栽培・飼養体系にどう影響するかを考えてみましょう。
 また、
施設や機械を新たに導入する場合には、耐用年数を踏まえた投資の限度額(投資限界)を計算し、経営の中で十分回収可能かどうかを調べ、採算のとれる設備投資を検討しましょう。
 

~キャッシュ・フローによる投資計画~
  キャッシュ・フローによる現金的な資金の流れで、投資効果の判定を行います。
 キャッシュ・フローは農業所得に減価償却費を加えたものです。
 減価償却費は経費として算入しますが、実際は経営外に流出しない(支払う必要のない費用)からです。
 ※でも、減価償却費は、将来の建物・機械の更新のために積み立てておくことが必要ですね!

 また、キャッシュ・フローを計算する場合には『限界利益』の考えを持ちましょう。    
 
限界利益=売上高-変動費
    「変動費」とは、変動費は経営規模、操業度、出荷量等と比例する以下の経費です。
  更新投資や小規模な拡大投資であれば、変動費に大きな変化はないものと予想されます。
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  (変動費の要素)
種苗費・素畜費・修理費・賃借料・家畜衛生費・肥料費・農薬防除費
動力光熱費・燃料費・諸材料費  飼料費・出荷資材費・運賃販売手数料雇用労賃(臨時)
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 農業所得増加額の試算のイメージ 

所得増加額試算イメージ

 
    ****では、実際にキャッシュフローを計算してみましょう*********   
○拡大投資額     3,500万円        
   減価償却費は耐用年数 14年、年250万円                         
○資金調達計画                                                           
   長期借入金   3,500万円 
   条件:償還年数 14年 据置なし   借入金利 1.0% 返済:元利均等
   
(1)投資効果の計算                                                                   
  【粗収益の予想増加額】                                               
  収量・出荷時期・品質を考慮し、既存経営より500万円増加              
  【固定費の増加分】                                                   
   ・常時雇用として、250日×4,800円/日×1日 =   年120万円        
   ・新規機械・施設の維持費 契約メンテナンス、固定的光熱費 年 50万円       
  【変動費】                                                           
    拡大投資計画であるので、既存の部門の損益計算から変動比率を出し、粗
   収益の増加分にこの変動比率(既存施設と違うためプラスα)         
    既存が損益計算書から45%程度であれば、50%(250万円)        
  【粗収益の増加額に対する限界利益率】                                 
    1-(250万円÷500万円)=50% 1-(予想変動費/予想粗収益)    
  【粗収益の増加額】              500万円増              
  【粗収益の増加額に対する変動比率】             50%                   
  【固定費の増加額】                                                   
  ・減価償却費  3,500万円÷14年=250万円                           
  ・常時雇用費              120万円                          
  ・新規機械・施設維持費       50万円    合計 420万円     
                                                                      
  農業所得増加額=予想粗収益×限界利益率-固定費増加額ですから       
         =500万円×50%-420万円                      
         =-170万円
                               
   この所得の増加額の投資計画で導入する施設の減価償却費を加えると   
    農業所得増加額+減価償却費増加分=-170万円+250万円             
                   =80万円                         
             投資効果は80万円。

 (2)年償還額の計算
  投資効果は80万円のプラスになりますが、年償還額をどの程度カバーされるかの判定を行います。
  1年当たりの償還元利金=元金×資本回収係数(CRF)
  資本回収係数(CRF)=i(1+i)n/(1+i)n-1  i :年利率  1.0%
                    n:償還年数 14年
                  分子:0.01×(1+0.01)14=0.011495
       分母:(1+0.01)14)-1=0.14947
      資本回収係数(CRF) =0.0769となります。
   1年間の償還元利金=3,500万円×0.076903(資本回収係数)
                269.2万円。

 この場合、試算の投資効果80万円だけでは、269.2万円の返済はできないことになります。
 投資効果額は不確定ですが、借入した借入金の269.2万円は確実でなものです。     
 では、どうしよう!
      経営者が判断することは、
       ■この時点で投資計画をあきらめる。
       ■いやいや規模や借入金等の見直しで独立採算が可能な規模を再検討する。
       ■規模拡大により部門を経営全体で不足分の約190万円を他の部門や経営全体・家計費と連動させて負担できるかを検討する。  
   この3つです。

       どれを行うかの意思決定と責任は経営者にあります(家族・役員等合意の下)!!

投資効果イメージ
     

 

<参考>新たな機械・施設等を導入する場合の投資計画の考え方
 投資をする場合複数の機械・施設を導入する場合が多いので、このような中で投資計画を立てる際には、それぞれ耐用年数の異なる設備等の年償却額の合計額を総事業費で除した年数を「総合耐用年数」として計算に用います。
 今回は、例として建物(耐用年数 14年)、機械(耐用年数 7年)で例示します。

総合耐用年数


  この場合、お金の目減りまで見込んで投資が可能かを「投資限界」から判断します。

    複数からの資金調達した場合の計算利子率は、下表(リンク)のとおり自己資金を含めて計算した場合、計算利子率は2.675%となります。

     資金調達と利子率計算の例
資金利子率表

    注:例ですので資金調達計画の組合せは、フィクションです。
  

   投資限界=資金回収見込額(純利益)×年金現価係数(PWF)
        設備投資額=U×(1+i)n-1/i(1+i)n 
            U::資本準収益     250万円
            i :計算利子率  2.70%
            n:資本回収期間  11年
                  分子:(1+0.027)11 -1=0.3405
         分母:0.027(1+0.027)11=0.036194
        設備投資額=250万円×9.4076(年金現価係数)
                  =23,519,000円
        つまり限界投資額は2,351.9万円となります。

    この場合、毎年250万円が回収できるかを検討してください。
  
 

 

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 最後に再度おさらいしますと、経営改善・向上のポイントは・・・
 ①キャッシュフローによる投資効果を確認しましょう。
 ②新規事業は、独立採算でまずは投資効果を検討しましょう。
 
③その上で、投資計画が現在の栽培・飼養体系へ影響するかどうかを検討しましょう。   
  
 です。今回紹介した内容を参考に経営のレベルアップを図りましょう!! 

※参考
農林水産省では、平成24年5月より、経営改善計画に沿った経営改善を着実に進めるため、「新たな農業経営指標」を作成し、取組の自己チェックと経営データの簡易診断が行えるようになりました。(農林水産省省HP参照:http://www.maff.go.jp/j/ninaite/shihyo.html

 

【お問い合わせ先】
栃木県農政部経営技術課
技術指導班
TEL:028-623-2322