品質と生産の向上・安定化で儲かる麦作りにチャレンジしましょう!(その3)

3 排水対策の徹底

   麦は湿害に弱い作物ですので、播種前に排水対策を徹底させる必要があります。排水対策のポイントは、①排水溝設置により地表排水性を良くすることと、②心土破砕等により浸透排水性を良くすることを、併せて実施することです。

   排水溝の設置は、「その1」の項でも述べたように、圃場周囲に額縁状に排水溝を設置し、圃場外の排水路に繋げます。

   排水施工と二条大麦の収量右の図は、浸透排水性を高めるための排水施工の有無と麦の収量の関係を示したものです。無処理に比べて本暗渠を施工すると収量が増えます。

 本暗渠と組み合わせて心土破砕を行うと、更に収量が増えます。

 つまり、排水対策の手間をかければかけるほど増収に結びつき、排水対策がいかに重要かが理解されると思います。

 

   最近では、心土破砕機の性能が優れ、作業スピードが5~6分/10aと格段に速いです。

 降雨後の土壌の乾きが早くなるので播種作業の効率も上がります。スタブルカルチやプラソイラがおすすめです。

   排水溝は設置できても心土破砕機がどうしても利用できない場合や、排水溝+心土破砕でも排水対策が不十分な場合は、畝立て同時播種栽培を組み合わせる方法があります。

 畝立ての方法は、ロータリ後方に畝盛り板、簡易溝切り板等を取り付け、畝を立てながらシーダーで播種します。

 ただし、溝際の条の生育が悪くなったり、深播きになりやすかったり、溝の部分が広いと生育ムラになったり、雑草が発生しやすくなるので、下の写真のように、ロータリの端から20~25cm内側の位置に最外部のシーダーをセットします。

畝立て同時播種

 

  また、麦作を団地化することも有効な排水対策になります。

 例えば、4月下旬になると各地で一斉に田んぼへの入水が始まります。すると、いわゆるバラ田の麦圃場では、てきめんに地下水位が上昇します。

 団地化することで面的に地下水位を下げることができます。

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4.土づくりと施肥管理

   麦は昔から「肥料で獲る」と言われますが、土づくりの土台があっての施肥技術です。   

土壌phと収量性との関係

  最近、葉が黄化したり、茎数不足になっている圃場をよく見かけます。

 右図のように、麦の適正pHは6.5~7.0です。特に、水稲収穫後はpH5.0~5.5になっていることが多いので注意して下さい。

  pH5.5以下では生育不良になり、5.0以下では急激に減収します。

  基本的には土壌分析して土壌pHを診断しますが、標準的な施用量は、苦土炭カル60~100kg/10aです。

    黒ボク土、気温の低い地域(低温年)では、燐酸を増肥し、根の発達や分げつの発生を促進させると生育が良くなります。

 燐酸成分は、く溶性・水溶性がバランス良く配合されていると効率的なので、苦土重焼燐がおすすめです。土壌分析で可給態燐酸を診断し、不足分を土づくり資材で補って下さい。 

   麦は苦土の要求度も高い作物です。

 苦土が不足すると、葉に黄化が生じます。特に二条大麦の止葉が早期に黄化する現象は苦土欠であり、光合成不足となり、粒の充実が悪くなります。

 また、苦土欠の状態では燐酸が十分に存在しても吸収できなくなってしまいます。

   よって麦の栽培には、石灰質肥料、燐酸質肥料、苦土肥料が不可欠です。

 この3者が予め配合された資材として、「OM-37」あるいは「健康大地」というのがあります。どちらかを毎年10アール当たり現物で4~5袋施用し、土づくりに心がけて下さい。 

   良質堆きゅう肥の施用も土づくりに有効です。

  特に畑地で連作すると、塩基バランスが片寄り、麦の生育が悪くなりがちですので、未然に防ぐために積極的に良質堆きゅう肥を施用して下さい。ただし、未熟堆肥の施用は百害あって一利無しです。

   数年前の肥料高騰以来、安価な肥料(オール14タイプ)を使用するケースが多くなっていますが、窒素成分に合わせた施肥設計にするので、オール14タイプでは燐酸不足に陥り、麦の生育が悪くなってしまいます。

  本県では、タイプの異なる優れた麦専用基肥肥料が用意されていますので、麦を栽培するに当たっては、必ず麦専用肥料を使用しましょう。

麦作には麦専用肥料を

 

最後になりますが、この情報が皆様の「儲かる麦作り」の一助になれば幸甚です。

 【問合せ先】
経営技術課技術指導班 電話028-623-2322 メールagriinfo@pref.tochigi.lg.jp
または、最寄りの農業振興事務所経営普及部

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品質と生産の向上・安定化で儲かる麦作りにチャレンジしましょう!(その2)

では、本題に戻り、重要4項目について順に説明します。

1 適地適作     
2 適期作業の実践  
3 排水対策の徹底  
4 土づくりと施肥管理
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1.適地適作

    本県の麦作地域の環境条件は意外にも多岐にわたります。品質と生産の向上・安定化を目指すには、麦の用途を十分考慮して、地域に適した麦種・品種を作付けすることが重要になります。

   まず、気象条件から見てみましょう。本県の麦作地域は南北に約80kmにおよび、麦生育期間の平均気温を見ても県北(大田原観測所)と県南(佐野観測所)では1.4℃の差があります。

 下図は、収穫の適期作業から麦作適地を判断したものです。収穫時期の雨害による品質劣化を考慮し、大麦の収穫晩限を6月14日、小麦の収穫晩限を6月20日としますと、3~5月の積算平均気温が、大麦の場合は950℃以上、小麦の場合は1050℃以上必要になります。

 したがって、大麦栽培適地の北限は大田原市北部、小麦栽培適地の北限は宇都宮市となります。

 ただし、小麦は農林61号を用いての試算ですので、最近の早生品種の場合、北限がもう少し延びます。

 いずれにしても、「適地」を考えて麦種を選ぶ必要があります。

 麦類の適地

 

   麦種や品種によって求められる品質が異なるので、前作・地目や土性も重要です。

   水稲作付け後の圃場に作付けすると、蛋白含量が低くなるので、ビール用二条大麦、精麦食用六条大麦(二条大麦)、製粉(日本麺)用小麦が適します。

 一方、畑(固定した転換畑も含みます)に作付けすると、蛋白含量が高くなるので、パン用小麦、醤油用小麦が適します。

   同じような理由で、土性の違いも大きく影響します。低地には比較的灰色低地土が多く分布し、台地には黒ボク土が多く分布しています。

 灰色低地土に作付けすると、蛋白含量が低くなるので、ビール用二条大麦、精麦食用六条大麦(二条大麦)、製粉(日本麺)用小麦が適します。黒ボク土に作付けすると、蛋白含量が高くなるので、パン用小麦、醤油用小麦が適します。

 

地形から判定した麦類の適地

 用途別の麦の品種

 

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2.適期作業の実践

  各作業には適期があります。特に播種作業と収穫作業は重要で、播種適期を外すと、生育に大きく影響しますし、収穫適期を外すと、品質が大きく劣化します。

 作業別労働時間(ビール用二条大麦) 麦作の作業別労働時間は概ね右のようになります。

 適期作業をするにあたって時間がかかるのは、種子消毒、施肥・播種、除草剤散布(播種直後)の一連の播種関連作業です。

 本県の播種適期は10日間ですので、農業従事者2人での作付け規模の上限は9.4haになります。

 これ以上の作付け規模では、雇用確保および更なる機械装備が必要です。

播種関連の作業にかかる労働時間

 地域別の播種作業の適期

   また、収穫作業の適期は概ね6日間ですので、農業従事者2人での作付け規模の上限は8.7haになります。

 これ以上の作付け規模では、雇用確保および更なる機械装備が必要です。

 また、収穫時期の異なる大麦と小麦を組み合わせることで作業分散を図る工夫も必要になります。

 収穫作業にかかる労働時間

 

   前述したように、播種作業が遅れると収量が低下し、収穫作業が遅れると品質が低下します。ご自分の経営内容を今一度見つめ直して下さい。

 

~各課題の解説は「品質と生産の向上・安定化で儲かる麦作りにチャレンジしましょう!(その3)」に続く ~ 

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品質と生産の向上・安定化で儲かる麦作りにチャレンジしましょう!(その1)

    麦播きの季節になりました。あちらこちらでトラクターを走らせ播種作業する光景を目にしますが、本県では11月が麦播きの最盛期になります。そこで今回は、麦の栽培技術の話です。

   本県は言わずと知れた全国有数の「麦作県」で、約5,000経営体が約14,000haに二条大麦、六条大麦、小麦などを生産しています。

   ところで、最近は麦が昔ほど穫れないと感じませんか?

   下の図は、単収の年次推移を麦種毎に示したものです。

   図を見ると、3麦ともに平成8年産をピークに低下傾向にあるのがわかります。仮に、平成7~9年産の単収平均値を100とすると、直近の3ヵ年(平成22~24年産)では、二条大麦が78、六条大麦が63、小麦が78となり、良いときの7割くらいしか穫れていません。

 麦類単収の推移

 

 それでは一体何故、麦が穫れなくなってしまったのでしょうか?

   原因は幾つかありますが、主に以下の3点に集約されると思います。

  1点目は、土づくりと施肥管理が不十分で、麦に適した土壌環境になっていないためです。

   2点目は、地球温暖化の影響で一度に降る雨量が多くなっている中で、排水対策が必ずしも十分ではないからです。

   3点目は、経営体当たりの作付け規模は順調に増加していますが、逆に、播種作業等が適期にできなくなっていることも一因であると思います。

   単収の低下、すなわち、麦が健全に生育しているとは言えない状態にあっては、当然のごとく、品質についても年次や地域で不安定になります。

   例えば、ビール用二条大麦の子実蛋白質含有率(以下、蛋白含量と略します)が、品質目標の10.0~11.0%に収まらないばかりか、受入れ基準の9.0~12.0%を逸脱するケースも散見されています

   最近は、加工適性が高く、栽培性も向上した新品種が目白押しで、普及しつつあります。しかしながら、生産基盤を見つめ直し、高品質・高位安定生産に転じないと、新品種の特性が発揮されないばかりか、それらの評価を落とすことになり、産地崩壊の危険性をはらんでいます。

そこで、課題を以下のように設定します。

「課題:品質と生産の向上・安定化を図り、実需者から選ばれる産地へ成長する。」

 課題解決には、下の4項目が重要と考えられますので、次回(その2)から順を追って各課題解決方法を解説していきます。

1 適地適作     
適期作業の実践  
3 排水対策の徹底  
4 土づくりと施肥管理

   今回(その1)は、本ブログを読んでいる皆様が、播種後、今すぐ取り組むことのできる「排水溝の設置」について先に触れておきたいと思います[排水対策については、本ブログ(その3)でも詳細を記述しますのでご覧下さい]。

 <今すぐにできること ~排水溝の設置~>
 下の写真は、大雨直後の圃場の写真です。排水溝を設置すると、水の退きが全然違います。
 勿論、排水溝を圃場外の排水路に繋げないと意味がありません。向かって左側の圃場は、後に湿害が生じて生育不良に陥るのは必至です。
 こうした対策は、播種前に行うのが基本ですが、菜種梅雨と呼ばれるように3月頃から降雨日が多くなりますので、播種後でも決して遅くはありません。明日にでも排水溝の設置と排水路への連結を実施して下さい。

 排水溝設置の有無と排水性~各課題の解説は「品質と生産の向上・安定化で儲かる麦作りにチャレンジしましょう!(その2)」に続く ~


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