水稲を適期に収穫して、今年も高品質米を!!

 つい先日田植えをしたと思ったら、いつの間にか二十四節気も『立秋』を過ぎ、お盆も終わりました。72候でいえば『寒蝉鳴(ひぐらしなく)』・・・秋はもう目の前です。
  
 さあ、25年産稲作シーズン(早植)もいよいよ大詰め!皆さん、収穫の準備を始めましょう。

 図1

今年は移植時こそ気温が低かったものの、5月中旬からは平年よりも気温が高い状態が続きました。梅雨もあっという間にあけてしまい、7月上旬の記録的な猛暑も重なって早植水稲の生育は進み、出穂期は平年よりも4~7日ほど早くなりました(図1、表1)。

表1

  出穂期が早くなれば、収穫期も早くなる可能性があります。
  8月2日に気象庁が発表した『関東甲信地方1か月予報(8月3日から9月2日までの天候見通し)』によると、向こう1か月の平均気温は【高い確率50%】、日照時間は【平年並または多い確率ともに40%】となっています。実際の天気がこの予報どおりであれば、順調に登熟が進み、収穫期は平年より早まります。

  ところで、昨年の出穂から収穫までの天気を覚えていますか?

  生育診断ほ(早植栽培)のデータを見直すと、昨年の出穂期は平年よりも2日早い程度でしたが、8月の気温は平年より2℃高く、日照時間は154%と多く経過したことから(図2)、成熟期が平年よりも5日早まりました。成熟期が早まったので、収穫も早めに行われていたかというと、そうでもないのが現状です。

   図2
   一般に、刈取適期は「帯緑籾率」(図3)と出穂後の「登熟積算気温」(出穂後の日平均気温の積算値)で判断し、【帯緑籾率10%(収穫開始)~3%(収穫終了)、登熟積算気温1,000~1,100℃】が適期です。 
   図3
    平成24年度の各地域の登熟積算気温から判断される適期は、さくら市が9月8日~12日、宇都宮市が9月5日~8日、小山市が9月1日~4日でした。しかし、どの地域もこの期間にようやく収穫が始まり、9月15日~17日に収穫盛期を迎えていました。
     
 この頃の稲は、籾が完全に黄化していました(写真1)。
写真1

   栃木米は胴割が多いという消費地の声があり、改善を求められています。その主な原因として考えられるのが「刈り遅れ」です。
   登熟積算気温が900~1,000℃を越えると胴割れの発生が始まることが知られており、早期落水でその傾向が助長されます(図4)。
図4

    ここ数年出穂後収穫まで高温が続くようになり、高温障害対策としてかん水が実施されるようになりました。以前に比べ、収穫近くまでほ場にある程度水がある状態になっていて、早期に落水しているほ場は少なくなっていると推定されますが、胴割れ粒は毎年発生し、品質低下の主要因となっています。

    したがって、現場では「刈り遅れ」て胴割れが発生しやすい状況を作り出していると考えられます。
 
 ※高温状態に注意
    8月に高温状態が継続すれば、今年も早植栽培の収穫が、昨年と同様に平年より早まります。県南部では8月20日過ぎ、県中部では8月末から稲の帯緑色籾率をこまめに確認し、各地の農業振興事務所やJA等からの情報も参考にしながら、適期に収穫を始めましょう。

<問合せ先>
栃木県農政部経営技術課
技術指導班
TEL:028-623-2322

25年産水稲で確実に実施したい病害虫対策(その2)~「雑草イネ」の撲滅対策~

 今回は「25年産水稲で確実に対策を実施したい課題(その2)」として雑草イネの現状及び課題と、その対策をご紹介します。

1 “最強の水田雑草”『雑草イネ』の発生を確認
   平成24年8~9月にかけて、県内3地域で雑草イネの特徴を持つイネ(以下雑草イネ)が見つかりました。
   雑草イネは、これまで岡山県や長野県で発生が多く報告されています。しかし、中央農業総合研究センター(以下、中央農研)によると、程度の大小はあるものの関東甲信全県で発生が確認され、その地域は増える傾向にあるようです。

  「雑草イネ?時々見かける雑穂のことか?」と思われるかもしれません。

   『雑草イネ』とは、雑草性と呼ばれる特徴を持つさまざまなイネの総称で、長野県では古くから「トウコン」と呼ばれていました。
 
 雑草イネのルーツは様々で、
    ①  どこかで作っていたインディカの糯品種から分離した個体が増殖した。
    ② 栽培種から分離した個体が増殖した。
    ③ 昔からその地域で栽培されている赤米から分離した個体が増殖した。
 などが考えられていますが、正確なところは今のところ分かっていません。

 

   現在、多くの異なるタイプが確認されていますが、その特徴で最もやっかいなこととして次の2つがあります。


出穂後2週間後から脱粒し、成熟期頃には大半が脱粒してしまう(図1)


玄米に色がついているので、穂に残っていたものが収穫米に混じると異品種混入として扱われ、品質低下の原因となる(写真2) 

  さらに、今のところ確認されているものは食用品種と草姿、出穂期、玄米色が異なっているものがほとんどですが、既に見分けが難しいものも見つかっています。

 

2 本県で確認されている「雑草イネ」のタイプ
 
  本県では、玄米は赤色で、出穂期はコシヒカリと同等から遅く、稈長はコシヒカリと同等から長い個体が確認されました(写真2)

 

 また、中央農研の解析結果により、出穂がコシヒカリと類似し、ふ先色が赤、芒が長く、玄米は赤色の「Aタイプ」と呼ばれる雑草イネに分類されると判断されましたが(写真3)、既知のタイプに識別できない個体も多く存在しました。

 

3 「雑草イネ」蔓延防止に向けた対策
 拡大を防ぐには、見つけたら蔓延する前に次の対策を徹底し、初期に封じ込めてしまうことが重要です。

① 発見したら株ごと抜く。抜いた株はほ場外に持ち出して処分する。
 ・出穂期前後に注意してほ場を観察し、植えた稲と草姿がどこか異なるイネを見つけたら要注意
 ・怪しいイネを見つけたら穂を触ってみる。ぼろぼろと脱粒するようなら雑草イネである可能性が極めて高い
 ・特に、昨年の農産物検査で写真3のような赤米が混ざっていると指摘された場合は、細心の注意を払ってほ場を観察する

② 発生を確認したほ場の機械作業は最後に行うとともに終了後は良く洗って、機械による拡散を防ぐ。

③ 発生が確認できたほ場は、秋耕せずに雑草イネの籾を鳥に食べさせ、さらに冬の寒さにさらして死滅させる。

④ 効果的な初期除草剤(プレチラクロール、ブタクロール、シメトリン、テニルクロール、インダノファン)を使用時期(範囲)の最も早い時期に使い、その後、イネ科雑草に強い除草剤で体系防除を行う(表1)。

 雑草イネは、見過ごしているとあっという間に増え、地域全体に拡散していく危険性があります。自分のほ場に植えた品種と異なるものが生えていたり、収穫した玄米に赤やオレンジ色の玄米が混ざっていたら、農業振興事務所や農協に相談してください。

 

【問合せ先】
経営技術課技術指導班 電話028-623-2322 メール
agriinfo@pref.tochigi.lg.jp

 

25年産水稲で確実に実施したい病害虫対策(その1)~稲縞葉枯病の拡大阻止~

   日差しが徐々に強くなり、暖かい日も多くなってきました。
   二十四節気の『啓蟄(3月5日)』を過ぎ、もうすぐ『立春(3月20日)』。いよいよ稲作シーズン到来です。

 

   特に問題が無いように思われた24年産ですが、今後に大きな不安を残す課題がいくつか生じています。今回はそれらのうち、2つの課題[(その1)では「稲縞葉枯病の拡大阻止」、(その2)では「雑草稲の撲滅対策」]を取り上げ、ご紹介します。解決策はあります。きっちりと対策をとっていきましょう。

 

1 イネ縞葉枯病が拡大傾向にあります
  平成25年1月31日の投稿でも御紹介しましたが、イネ縞葉枯病(以下、縞葉枯病)の発生が県中南部を中心に増えてきています(写真1↓) 

 

  農業環境指導センターが平成24年10月に再生イネで調査した結果では、発病株率は6.4%(平年比155.6%)で平年より多く、特に県南部の罹病性品種(コシヒカリ等)作付ほ場で発病株が多く確認されています(図1)

  さらに、縞葉枯病ウイルスを媒介するヒメトビウンカの生息密度と保毒虫率を11月に調査した結果では、生息密度が県平均60.6頭/10㎡で平年に比べ312.2%と非常に多く、保毒虫率も県平均7.0%で、昨年から過去10年で最も高い状況であることが分かりました(図2↓)

  本県において、縞葉枯病の要防除水準は「再生稲の発病株率10%超、越冬世代の保毒虫率10%超」と定められており、県南部ではこの水準を大きく超える値が出てきています。
  要防除水準とは「今の防除技術で対応すれば被害は防げる」レベルであり、これを超えると、株の枯死や穂の出すくみ、不稔等による減収により、経済的被害が発生します。

 

   栃木県は昭和40年~平成の初め頃まで、県南部を中心に縞葉枯病の被害に苦しみました。平年の半分しか取れないほ場も現れ、県平均の保毒虫率は15~20%と高く、昭和59年の発生面積は20,000haを超えました。生産者と関係機関・団体が一体となって行った、抵抗性を持った品種の普及、広域的な共同防除の実施などの対策により、被害は収まったかに思えました。

  

  しかし、コシヒカリなど、抵抗性を持たない品種の作付拡大や防除回数の減少などにより、20年の時を経て再び不気味な姿を見せ始めています。1月31日の投稿でもご紹介した次の対策を地域全体で徹底し、今のうちに縞葉枯病を封じ込めてしまいましょう。

<稲縞葉枯病封じ込め対策>

① 抵抗性品種の作付
   罹病性品種から抵抗性品種「とちぎの星」「あさひの夢」へ品種を替える。飼料イネも「クサホナミ」「はまさり」等の抵抗性品種を作付する。

 

② 箱施用剤の使用
   保毒虫率が高い地域で罹病性品種(コシヒカリ、なすひかり等)を作付けする場合は、イミダクロプリド箱施用剤(商品名アドマイヤーCR箱粒剤等)やクロチアニジン箱施用剤(商品名ダントツ箱粒剤等)、又はこれらを含む混合箱施用剤で防除を行う。
   なお、フィプロニル箱施用剤(商品名プリンス粒剤等)は、県内で薬剤感受性が低下したヒメトビウンカが確認されているため、保毒虫率が高い地域では罹病性品種に使用しない。
   さらに、箱施用剤の使用や切り替えは、地域全体で行うと防除効果が高まる。

 

③ 早めの秋耕
    再生稲の病害株は早めに秋耕し、ヒメトビウンカの生息地を減らすとともに、病原ウイルスを吸汁獲得できないようにする。

 

④ 畦畔等の雑草除去
    冬季畦畔等の雑草を除去し、害虫の越冬場所をなくす。

 

【問合せ先】
経営技術課技術指導班 電話028-623-2322 メール
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