バラの生産性向上に向けた炭酸ガス施用技術

 

   栃木県のバラ農家は約40戸で、主に宇都宮市から県南地域にかけて栽培され、首都圏を中心に出荷されています。出荷量は全国第9位で、品質が高いことで市場から評価されていますが、高単価で取り引きされる12~3月の出荷量は少ない状況です。重油価格が高騰するなか、いかにしてこの時期に出荷量を増やしていくかが課題となっています(図1)。

   ところで、県内のバラ農家はほとんどが養液栽培です。堆肥を施用する土耕では、外気以外にも光合成に必要な炭酸ガスが地中から供給されますが、養液栽培は地面にシートを敷いているため地中からの炭酸ガスの供給は少なく、天窓が開く時間の少ない冬季は炭酸ガスが不足しやすい傾向にあるといえます。


   近年、他県の研究機関や先進農家で冬季の炭酸ガス施用による収量向上が認められてきました。
  本県においても「平成23年度『新技術導入実証展示ほ』」に位置づけて、冬季の収量性向上に向けた炭酸ガスの施用効果を検証しましたので、その結果をご紹介します。

 

 

1 炭酸ガス施用効果の検証

(1) 施設内の炭酸ガス濃度の推移

   炭酸ガスを施用した場合の、1日の炭酸ガス濃度の推移を確認しました(図2)。

   炭酸ガスは午前4時頃から施用を始め、天窓が開く10時以降は15時頃まで間欠的に施用しました。

   炭酸ガス濃度は午前6時頃1,500ppmとなった後、同化作用による炭酸ガスの吸収と天窓の開きにより12時頃に一番低くなりました。その後、徐々に高くなり、夜間は700ppm程度で推移しました。


 

(2) 炭酸ガス施用による増収効果

   今回、「レッドスター・赤輪系」の品種で、かつ栽培方式はアーチング栽培における施設で、炭酸ガス施用の増収効果の確認を行いました。

  •    収量は炭酸ガス無施用の年に比べ、11~3月まですべての月で増加し、調査期間内で30%増加しました。収量が増加した要因としては、炭酸ガスを施用したことで樹勢が旺盛になり、芽立ち数の増加とブラスチングが減少したことによるものと考えられます。
  •    品質は切り花長60cmの中位等級の増加が特に顕著で、70~80cmの上位等級は炭酸ガスを施用しない場合とほぼ同等でした。これは、株元以外にも折り曲げた同化専用枝からも芽が発生したことで、中位等級の切り花が増えたものと考えられます。

 

   今回の調査では、炭酸ガスの濃度障害はみられませんでした。今回の調査したほ場では冬季に30%(5,000本/10a)の増収したことから、金額ベースでは約50万円(単価100円で計算)の増益となりました。

 

2 炭酸ガス施用に関する経費

    炭酸ガス発生器はLPガスか灯油を使用するものが市販されています。また、設定した濃度でON-OFFするコントローラーをつけることで、過剰な施用や不足することを軽減することができます。

<10a当たりの経費>

イニシャルコスト

 炭酸ガス発生器   220,000円 タンセラTC-2000T(バリテック新潟社製)  

 コントローラー   100,000円 

● ランニングコスト

 LPガス       100,000円(11月~4月中旬まで施用)

 

   設置経費に約32万円ほど必要となります。今回の調査したほ場では冬季に30%(5,000本/10a)の増収したことから、50万円(単価100円で計算)の増益となり、初年度で経費分は回収できました。

 

 

<おわりに>
 炭酸ガス施用効果が実証されたことで、15戸で炭酸ガス発生器が導入されました。しかし、品種により効果の差もあるようなので、さらに、関係機関と連携して検証を進め、本県バラの振興に繋げて行きたいと思います。

 

【問合せ先】
経営技術課技術指導班 電話028-623-2322 メール
agriinfo@pref.tochigi.lg.jp

 

冬春トマト経営改善のヒント(最近の動きから)

   本県のトマトは、平成22年産農林水産省農業生産所得統計上で、初めて農業産出額100億円を達成するなど、全国に誇る産地に成長し、後継者・新規参入者も着実に増えてきています。
     トマトは健康ブームもあって単価が安定し、平成24年産も比較的高単価で推移しましたが、燃油や資材価格の高騰なども見据えて、さらに収益性を高めていくことが必要です。
 今回は、冬春トマトの経営改善のヒントを、最近の先進的事例から紹介しますので、参考にしてください。

 

 
   1  高軒高ハウス・直立誘引による高収益栽培

  
  単収を増やしていくために、最も効果が高いのが、高軒高ハウスと直立誘引栽培の導入です。

  • 県内では、平成14年度から国庫事業「輸入急増農産物対応特別対策事業」や「生産振興総合対策事業」、「強い農業づくり交付金」等を活用して、継続的に「低コスト耐候性ハウス」が導入されてきた結果、冬春トマト作付面積の約18%を占めるまで至っています。
  • これに伴い、既存作型を前進化させた「越冬長期作型」も導入され、周年出荷に向けた取り組みが進んでおり、今後もこの傾向に拍車がかかっていくものと思われます。

   【低コスト耐候性ハウスとは?】

(1) 耐候性

   ・風対策:風速50m/秒の耐風強度を持
      つ鉄骨ハウス
   ・雪対策:新雪50kg/㎡の積雪に耐えうる鉄骨ハウス

(2) 低コスト

   ・従来の方法でその地域で上記の耐候性を持つ鉄骨ハウスの本体工事をした場合の
  費用が70%であること。

平成24年産栽培事例の紹介
 ・栽培方法 定植苗:セル成型苗(本葉4~5枚)直接定植又は、3寸ポット苗幼苗定植
 ・定植時期 8月中旬~9月中旬
 ・収穫期間 10月下旬~翌年7月上旬
 ・平均反収 概ね20t(最多収量は30tを超える事例あり)
                ※既存ハウスの10a当たり平均収穫量は概ね13t~14t(概算)
 ・粗 収 益  10a当たり収量30t×kg単価(平成24年冬春トマト)382円=約11,460,000円

 

最近の取り組み紹介
 「既存ハウスの嵩上げによる栽培空間確保による長期どりへの取り組み」
すぐに低コスト耐候性ハウスを導入できない場合、既存ハウスを約60cm程度嵩上げ工事を行って、棚線の位置を高くし、栽培期間を長期化する取組も行われています
 ・工事費用は10a当たり200万円~230万円程度です。
・なお、嵩上げ工事は耐風速、耐震性が低下する懸念があるため、強い風が吹きやすい地域などでは、十分な注意が必要です。

 

2  炭酸ガス施用の効果

 

  • 炭酸ガスの施用については、既にいちごでは、広く取り組まれていますが、トマトにおいても、果実の肥大促進や軟弱徒長防止、光合成促進等の効果があることから、徐々に普及してきています。
  • 現在、栃木県業試験場野菜研究室では、炭酸ガスや他の要因を含めたトータル的な超多収技術の確立に向けて、試験研究を行っています。

 「県内における炭酸ガス発生器導入状況」
   ・普 及 率 高軒高ハウス(低コスト耐候性ハウス) 約50%の普及率(増加傾向)
                     既存ハウス                                             約10%の普及率(増加傾向)
   ・施用濃度  400ppm
   ・施用時間 早朝から昼前後
   ・施用効果 果実の肥大促進、軟弱徒長防止、光合成促進等
     ・主な導入機種
                   商品名:タンセラTC2000TFN 約17万円
                                     2000TS  約22万円
                   メーカー名:バリテック新潟
                      カロリー:20,000kcal

 CO2コントローラー利用で400ppm施用の場合1台で概ね300坪制御可能
  プロパンガス代は10a当たり、冬春トマトで約10~15万円前後
  栃木県内では4~5年前から概ね100台程度導入されています。

  

 

3  燃料高騰対策としてのヒートポンプの導入

  

 施設栽培では、原油価格の変動に大きく影響を受けない経営を行うためには、A重油を使用した温風暖房機ではなく、より経済性の高いヒートポンプの導入によりコスト低減が期待できます。

  • ヒートポンプは、暖房機としての省エネ効果のみならず、除湿機能や冷房機能により灰色かび病対策、草勢の確保にも効果があります。
  • また、低コスト耐候性ハウス導入に伴う「越冬長期作型」においては、定植時期が梅雨明け後の高温時期にあたるため、遮光カーテンとヒートポンプの冷房機能を併用することで、生育の安定確保、果実品質の向上にも有効であり、現在県内のトマト栽培では、5.7haで取り組まれています。

  「県内におけるヒートポンプ導入状況」
栽培農家導入面積  13ha
・トマト栽培農家導入面積   5.6ha(47台)

    一例として、300坪にヒートポンプ10馬力を2台導入すると、本体で約260万円(2台分)、搬入取付、配管工事で約50万円、電気工事で約90万円、合計400万円の初期投資が費用がかかります。

    A重油温風暖房機のみに比べ燃油費が約30~40%ぐらい下がるというデータもあります。

 

4  関連施設等導入に伴う支援策

    

  本県では、低コスト耐候性ハウスをはじめ、各種付帯施設導入に対して、国庫事業や県単補助事業による支援を行っています。

   予算規模の縮小や事業採択要検討等幾つか制約がありますが、導入希望がある場合は、最寄りの農業振興事務所又は各農業協同組合にご相談ください。

     【導入可能なメニュー】

 ・高軒高ハウス(低コスト耐候性ハウス)、高温抑制型温室(自動換気システム、循環扇を備えるハウス)、環境制御施設(日射、降雨、風力等の気象に応じ、施設内の温度条件、光条件、土壌条件、炭酸ガス濃度等の環境を複合的に制御するシステムを備えた施設:マキシマイザ-を含む)。
・付帯設備として、ヒートポンプ導入も可能ですが、単体での導入は不可となります。
・省エネルギー設備(木質ペレット暖房機)
・サプライチェ-ンの構築に関する施設
・広域流通システム構築のための施設整備 等

 

5  今後の経営発展に向けて

 

   平成12年産トマトにおいて、単価が235円/kgに落ち込み、経営危機を招いた事例がありましたが、その後、この時の経験を踏まえ、低コスト等に関する先進的な取り組みが県内各で取り組まれ、徐々に経営が安定化してきました。

 
     今回紹介したものは、その中で特に重要な取組です。他にも、最近は、「低段密植栽培」、「複合環境制御装置:マキシマイザー」の導入、「黄化葉巻病耐病性品種」の検討等の新たな取組も始まっています。
 

    平成24年産トマトは、過去に例のない高単価で販売されたことから、生産者の粗収益は大幅に増加しましたが、一方で、熊本県では増反の動きが活発で、今後、京浜市場への攻勢をさらに強めていくものと思われます。また、愛知県では本県の先進事例を参考に作期拡大による単収向上に取り組む動きも出てきており、産地間競争が激化していく可能性があります。
 

   今後、現在ある経営資産(ハウス等)を活かしながら、より効率的な経営の確立に向けて、高度な環境制御技術やコスト低減技術等を上手に活用し、さらなる収益性の向上を図り、足腰の強い魅力あるトマト経営の確立に向け取り組んでいきましょう。

 

【高収益トマト経営実現7・5プロジェクトの推進】
  目標の7とは! 「越冬作への転換」
                  →長期安定出荷を目的に、販売期間7ヶ月間を目指します。
                           「生産性の向上」
                            →10aあたり収量17tを目指します。
  目標の5とは! 「消費者に信頼される食味の向上」
                             → 食味を重視し、糖度5度以上のトマトの安定供給を目指します。
                          「収益力の向上」
                              →10aあたり販売金額550万円を達成します。

【問合せ先】
経営技術課技術指導班 電話028-623-2322 メール
agriinfo@pref.tochigi.lg.jp

※ 栃木県農政部の情報は、「とちぎファーマーズチャレンジネット(http://www.agrinet.pref.tochigi.lg.jp/)」や「栃木県農政部ツイッター(http://twitter.com/tochigi_nousei)」でも発信していますので、是非、ご利用ください。