水稲の品質を低下させる「斑点米カメムシ類」を効果的に防除しましょう!

 斑点米カメムシ類(以下、カメムシ類)は、ウンカ類(※)と並び、水稲の主要な害虫です。近年では、県内各地で発生が見られ、問題となっています。 

 カメムシ類は登熟中のイネ科植物の穂を好むため、出穂した水稲の籾を吸汁し、斑点米を発生させます(写真1)。斑点米が混ざると、玄米の等級落ちの原因になるため、カメムシ類の防除は、水稲の病害虫防除の中でも重要な作業の一つです。

※ 1月31日掲載「「芝焼き」に代わる病害虫の防除方法について」参照

◆県内の水稲で発生する主なカメムシ類

 県内で発生する主なカメムシ類は、大型のカメムシ類(クモヘリカメムシ、ホソハリカメムシ)と小型のカメムシ類(アカヒゲホソミドリカスミカメ、アカスジカスミカメ)の大きく2つに分けられます(写真1)。

 

◆水稲に害を与えるカメムシ類の生態はどのようになっているのでしょうか?

 県内の水稲のカメムシ類による被害は、主に大型のカメムシ類によるものです。
 大型のカメムシ類は成虫のまま山林等で越冬し、6~7月頃イネ科雑草地で繁殖します。そして、ヒエ等のイネ科雑草や水稲が出穂すると、水田内に飛び込みます。

 このため、あぜ道の枯れ草の焼却では、林で越冬する大型カメムシ類の成虫は防除できません

 あぜ道等の枯れ草の焼却は、害虫の防除手段としては、効果が低い手段です。
 加えて、平成25年3月1~18日までに発生した、下草、枯れ草火災は121件で、昨年3月分(36件)の3倍を上回っています(下野新聞社調べ)。また、平成23年以降、死亡事故も2件発生しています。 

 

それでは、カメムシ類はどのように防除したら良いのでしょうか。 

 カメムシ類の被害を防ぐには、水稲の出穂期前から畦畔及びほ場内のイネ科雑草の発生を抑えること、特に、イネ科雑草を出穂させないことが最も重要です。

 次の対策を行ってカメムシ類が発生しにくい環境を整え、被害を防ぎましょう。

 (1) 水田周辺の除草(畦畔2回連続草刈り)

 農道や畦畔のイネ科雑草は、水田内に進入する際の中継地点となります。

 水稲出穂2~3週間前と水稲出穂期頃(一度草刈りしたイネ科雑草が出穂する前)の2回除草を行いましょう(図1)。

(2) 水田内の除草

 水稲の出穂前に結実するヒエの穂、イヌホタルイの小穂はカメムシ類の誘引源・発生源となるので、結実までに除草します。

(3) 薬剤防除

 穂揃い期にカメムシ類が水田内で確認できた場合は、乳熟初期(出穂期7~10日後)までに適用のある薬剤で防除を行ってください。

 また、県内の多くの地域で、無人ヘリコプターによるカメムシ類の防除が行われていますが、散布計画や機体数等の理由により、防除適期を外している事例が見られます。

 適期防除を心がけるとともに、薬剤散布後もカメムシ類の発生が多い場合は、7~10日間隔で1~2回の追加防除を行いましょう。

 

終わりに

 カメムシ類が多発すると、斑点米を発生させ、玄米の品質に大きな影響を及ぼします。ここで紹介したような防除技術を組み合わせて、カメムシ類の適切な防除を行い、斑点米発生による玄米品質の低下を防ぎましょう!

問い合わせ先
栃木県農政部経営技術課
環境保全型農業担当
TEL:028-623-2286
FAX:028-623-2315

 

25年産水稲で確実に実施したい病害虫対策(その2)~「雑草イネ」の撲滅対策~

 今回は「25年産水稲で確実に対策を実施したい課題(その2)」として雑草イネの現状及び課題と、その対策をご紹介します。

1 “最強の水田雑草”『雑草イネ』の発生を確認
   平成24年8~9月にかけて、県内3地域で雑草イネの特徴を持つイネ(以下雑草イネ)が見つかりました。
   雑草イネは、これまで岡山県や長野県で発生が多く報告されています。しかし、中央農業総合研究センター(以下、中央農研)によると、程度の大小はあるものの関東甲信全県で発生が確認され、その地域は増える傾向にあるようです。

  「雑草イネ?時々見かける雑穂のことか?」と思われるかもしれません。

   『雑草イネ』とは、雑草性と呼ばれる特徴を持つさまざまなイネの総称で、長野県では古くから「トウコン」と呼ばれていました。
 
 雑草イネのルーツは様々で、
    ①  どこかで作っていたインディカの糯品種から分離した個体が増殖した。
    ② 栽培種から分離した個体が増殖した。
    ③ 昔からその地域で栽培されている赤米から分離した個体が増殖した。
 などが考えられていますが、正確なところは今のところ分かっていません。

 

   現在、多くの異なるタイプが確認されていますが、その特徴で最もやっかいなこととして次の2つがあります。


出穂後2週間後から脱粒し、成熟期頃には大半が脱粒してしまう(図1)


玄米に色がついているので、穂に残っていたものが収穫米に混じると異品種混入として扱われ、品質低下の原因となる(写真2) 

  さらに、今のところ確認されているものは食用品種と草姿、出穂期、玄米色が異なっているものがほとんどですが、既に見分けが難しいものも見つかっています。

 

2 本県で確認されている「雑草イネ」のタイプ
 
  本県では、玄米は赤色で、出穂期はコシヒカリと同等から遅く、稈長はコシヒカリと同等から長い個体が確認されました(写真2)

 

 また、中央農研の解析結果により、出穂がコシヒカリと類似し、ふ先色が赤、芒が長く、玄米は赤色の「Aタイプ」と呼ばれる雑草イネに分類されると判断されましたが(写真3)、既知のタイプに識別できない個体も多く存在しました。

 

3 「雑草イネ」蔓延防止に向けた対策
 拡大を防ぐには、見つけたら蔓延する前に次の対策を徹底し、初期に封じ込めてしまうことが重要です。

① 発見したら株ごと抜く。抜いた株はほ場外に持ち出して処分する。
 ・出穂期前後に注意してほ場を観察し、植えた稲と草姿がどこか異なるイネを見つけたら要注意
 ・怪しいイネを見つけたら穂を触ってみる。ぼろぼろと脱粒するようなら雑草イネである可能性が極めて高い
 ・特に、昨年の農産物検査で写真3のような赤米が混ざっていると指摘された場合は、細心の注意を払ってほ場を観察する

② 発生を確認したほ場の機械作業は最後に行うとともに終了後は良く洗って、機械による拡散を防ぐ。

③ 発生が確認できたほ場は、秋耕せずに雑草イネの籾を鳥に食べさせ、さらに冬の寒さにさらして死滅させる。

④ 効果的な初期除草剤(プレチラクロール、ブタクロール、シメトリン、テニルクロール、インダノファン)を使用時期(範囲)の最も早い時期に使い、その後、イネ科雑草に強い除草剤で体系防除を行う(表1)。

 雑草イネは、見過ごしているとあっという間に増え、地域全体に拡散していく危険性があります。自分のほ場に植えた品種と異なるものが生えていたり、収穫した玄米に赤やオレンジ色の玄米が混ざっていたら、農業振興事務所や農協に相談してください。

 

【問合せ先】
経営技術課技術指導班 電話028-623-2322 メール
agriinfo@pref.tochigi.lg.jp

 

25年産水稲で確実に実施したい病害虫対策(その1)~稲縞葉枯病の拡大阻止~

   日差しが徐々に強くなり、暖かい日も多くなってきました。
   二十四節気の『啓蟄(3月5日)』を過ぎ、もうすぐ『立春(3月20日)』。いよいよ稲作シーズン到来です。

 

   特に問題が無いように思われた24年産ですが、今後に大きな不安を残す課題がいくつか生じています。今回はそれらのうち、2つの課題[(その1)では「稲縞葉枯病の拡大阻止」、(その2)では「雑草稲の撲滅対策」]を取り上げ、ご紹介します。解決策はあります。きっちりと対策をとっていきましょう。

 

1 イネ縞葉枯病が拡大傾向にあります
  平成25年1月31日の投稿でも御紹介しましたが、イネ縞葉枯病(以下、縞葉枯病)の発生が県中南部を中心に増えてきています(写真1↓) 

 

  農業環境指導センターが平成24年10月に再生イネで調査した結果では、発病株率は6.4%(平年比155.6%)で平年より多く、特に県南部の罹病性品種(コシヒカリ等)作付ほ場で発病株が多く確認されています(図1)

  さらに、縞葉枯病ウイルスを媒介するヒメトビウンカの生息密度と保毒虫率を11月に調査した結果では、生息密度が県平均60.6頭/10㎡で平年に比べ312.2%と非常に多く、保毒虫率も県平均7.0%で、昨年から過去10年で最も高い状況であることが分かりました(図2↓)

  本県において、縞葉枯病の要防除水準は「再生稲の発病株率10%超、越冬世代の保毒虫率10%超」と定められており、県南部ではこの水準を大きく超える値が出てきています。
  要防除水準とは「今の防除技術で対応すれば被害は防げる」レベルであり、これを超えると、株の枯死や穂の出すくみ、不稔等による減収により、経済的被害が発生します。

 

   栃木県は昭和40年~平成の初め頃まで、県南部を中心に縞葉枯病の被害に苦しみました。平年の半分しか取れないほ場も現れ、県平均の保毒虫率は15~20%と高く、昭和59年の発生面積は20,000haを超えました。生産者と関係機関・団体が一体となって行った、抵抗性を持った品種の普及、広域的な共同防除の実施などの対策により、被害は収まったかに思えました。

  

  しかし、コシヒカリなど、抵抗性を持たない品種の作付拡大や防除回数の減少などにより、20年の時を経て再び不気味な姿を見せ始めています。1月31日の投稿でもご紹介した次の対策を地域全体で徹底し、今のうちに縞葉枯病を封じ込めてしまいましょう。

<稲縞葉枯病封じ込め対策>

① 抵抗性品種の作付
   罹病性品種から抵抗性品種「とちぎの星」「あさひの夢」へ品種を替える。飼料イネも「クサホナミ」「はまさり」等の抵抗性品種を作付する。

 

② 箱施用剤の使用
   保毒虫率が高い地域で罹病性品種(コシヒカリ、なすひかり等)を作付けする場合は、イミダクロプリド箱施用剤(商品名アドマイヤーCR箱粒剤等)やクロチアニジン箱施用剤(商品名ダントツ箱粒剤等)、又はこれらを含む混合箱施用剤で防除を行う。
   なお、フィプロニル箱施用剤(商品名プリンス粒剤等)は、県内で薬剤感受性が低下したヒメトビウンカが確認されているため、保毒虫率が高い地域では罹病性品種に使用しない。
   さらに、箱施用剤の使用や切り替えは、地域全体で行うと防除効果が高まる。

 

③ 早めの秋耕
    再生稲の病害株は早めに秋耕し、ヒメトビウンカの生息地を減らすとともに、病原ウイルスを吸汁獲得できないようにする。

 

④ 畦畔等の雑草除去
    冬季畦畔等の雑草を除去し、害虫の越冬場所をなくす。

 

【問合せ先】
経営技術課技術指導班 電話028-623-2322 メール
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「芝焼き」に代わる病害虫の防除方法について

◆はじめに

 一般的に「芝焼き」といわれる農道やあぜ等の枯れ草焼きは、冬の農村風景の一つとして昔から知られています。

 芝焼きは、越冬病害虫の防除を目的として行われるもので、県内においても、水稲の縞葉枯病や黄萎病を媒介する、ヒメトビウンカやツマグロヨコバイを防除するために、冬季に水田のあぜ等で芝焼きが行われてきました。

ヒメトビウンカ

 

 

 

 

 

 

 しかしながら、ウンカ類幼虫の越冬前密度は年によって変動しており、芝焼き実施の有無との間に関連性がみられません。そのため、現状では、芝焼きによる病害虫防除効果は判然としていません。

 加えて、芝焼きが原因と考えられる火事や死亡事故が、毎年数件発生しており、周辺住民からの苦情も寄せられています。さらに、平成23年3月以降は、東日本大震災による原発事故の影響もあり、飛散した放射性物質への懸念の声も聞かれます。

 

◆ 芝焼きに代わる病害虫防除法とは

 芝焼き以外の方法で、ヒメトビウンカ等の害虫を防除するためには、次の3つの方法を組み合わせて防除することが有効です。

①  縞葉枯病に抵抗性を持つ水稲品種を作付する

 
1980年代までは、縞葉枯病は県内における最重要病害の一つでしたが、「月の光」や「星の光」等の抵抗性品種を作付したことにより、1990年代には発生が少なくなりました(図)。

 しかし、最近では、県中南部を中心としてヒメトビウンカの保毒虫率や縞葉枯病の発生が増えています。その主な原因としては、近年コシヒカリ等の抵抗性を持たない品種の作付が増加したためと考えられます。 

図

 そこで登場するのが、「とちぎの星」です。

 「とちぎの星」は、栃木県農業試験場が育成した水稲の新しい品種で、縞葉枯病に抵抗性をもつとともに夏の高温に強く、食味も優れています

 県では、県中南部を中心に作付推進を図っており、平成24年度は県内の水田41.2haで作付されました。さらに、平成25年度は200ha、平成26年度には1,000haの作付拡大を計画しています。

 縞葉枯病害の発生が増えている県中南部では、「とちぎの星」を導入するようにしてください。

② 水田を適切に管理し、病害虫の発生を抑える

 ヒメトビウンカは、縞葉枯病を発病している再生稲株(ひこばえ)から吸汁することで、縞葉枯病ウイルスを取り込み保毒します。

 そのため、水稲の収穫後には速やかに秋耕を行い、ひこばえを土の中に埋め込むことでヒメトビウンカがウイルスを保毒することを防ぎましょう

 また、ヒメトビウンカが水田に入ることを防ぐことも重要です。

 畦畔等の雑草は、ヒメトビウンカ等の害虫を誘い込み、増殖や越冬の場所となるほか、ほ場で薬剤散布した時の避難場所となり得るため、夏から秋にかけて草刈りや除草剤の散布を行うことで、ほ場への病害虫の侵入を抑えましょう。

③  薬剤防除により害虫の発生を減らす

 水稲の育苗時に、ヒメトビウンカやツマグロヨコバイに適用のある箱施用剤を使用して、発生を減らしましょう。

 ただし、薬剤が効かないヒメトビウンカの発生が増えているため、縞葉枯病保毒虫率が高い地域(県中南部)においては、基本的に「とちぎの星」等の抵抗性品種を作付けをすることが最善です。

  さらに、縞葉枯病の発生が多い地域では、ヒメトビウンカの発生タイミングに合わせて、早植で6月下旬、普通植で7月上旬に本田での防除を行うと効果的です。

 ◆終わりに

 以上のように、「芝焼き」に代わるヒメトビウンカ等の防除方法には、様々なものがあります。

 縞葉枯病や黄萎病は多発すると、収量等に大きな影響を及ぼしますので、ここで紹介したような防除技術を組み合わせて、水稲のヒメトビウンカ等の適切な防除を行い、縞葉枯病等の発生を抑えましょう。

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経営技術課環境保全型農業担当
TEL:028-623-2285
FAX:028-623-2315
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※ 栃木県農政部の情報は、「とちぎファーマーズチャレンジネット(http://www.agrinet.pref.tochigi.lg.jp/)」や「栃木県農政部ツイッター(http://twitter.com/tochigi_nousei)」でも発信していますので、是非、ご利用ください。

効率的な病害虫防除に向けた取組②

<県内における新たな病害虫の発生>

 病害虫の発生は栽培作物・作型の変遷や気象条件等により、常に変化しています。
 これまで問題とならなかった病害虫についても、様々な要因の変化により、その発生が顕在化することがあります。

 また、国際化に伴う物流の多様化も病害虫の発生には重要なポイントとなってきます。
 日頃からほ場を良く観察し、病害虫の発生状況に注視することが重要です。

  近年、以下のような病害虫の発生が県内で確認されていますので、注意願います。
 なお、見慣れない病害虫を発見した際は、農業振興事務所または農業環境指導センターまでお知らせください。

◇りんどうTSWV(トマト黄化えそウイルスによる病害)

 アザミウマ類(主にミカンキイロアザミウマ)が媒介するウイルス病です。
 本県での本ウイルスの発生はリンドウ以外にもトマトやキクで確認されています。

 

◇タバコノミハムシ

 なすの減農薬栽培等、薬剤散布回数の少ないほ場で発生が確認されています。

 

◇クロメンガタスズメ  

 なすトマトの減農薬栽培等、薬剤散布回数の少ないほ場で発生が確認されています。

 

◇チャトゲコナジラミ

 での発生が確認されています。
 茶のほかにサザンカやサカキ等へも寄生するため注意が必要です。

 

◇ヒメボクトウ

 なしでの発生が確認されています。
 他県では、りんごに対する加害も報告されているため注意が必要です。

 

◇ピシウム根腐病

 高温性のPythium属菌(Pythium helicoides)で、夏季の高温によって主に根腐症状を引き起こします。
 県内では、いちご、バラやキクで発生しています。

 

※農業環境指導センターHPでは、病害虫の発生予報、各種病害虫の薬剤感受性検定結果、病害虫天敵図鑑等、各種病害虫情報を随時公開しています。
定期的にチェックし、適切な病害虫防除にお役立てください。
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