いちごのアザミウマ類を賢く抑える!

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 【写真1 アザミウマ類の加害によるいちご果実表面の褐変】

 栽培中のいちごをじっくり観察してみましょう。写真1のように、表面が茶色くカサカサになった果実はありませんか?このような果実を見つけたら、アザミウマ類”の発生を疑ってください!

 次に、ハウス内の花を観察してみましょう。花の上に写真2のような1ミリほどの小さく細長い虫がいれば、それが犯人のアザミウマ類です。10%以上の花でアザミウマ類が見つかるようなら防除が必要となります。

写真1
 【写真2 いちご花上のヒラズハナアザミウマ成虫】

 今回のブログは、いちごの大害虫アザミウマ類の生態、最近話題の秋被害、防除のポイントの3本だてでお送りしたいと思います。

1.敵を知り、己を知れば何とやら・・・アザミウマ類の生態を知ろう!
 いちご栽培では、毎年晩秋と春先にアザミウマ類の果実食害による被害の発生がみられています。上手な防除のために、まずはアザミウマ類の生態を知ることが大切です。
 いちご果実を加害するアザミウマ類は、もともと野外に咲く花に集まり、主に花粉を餌とする昆虫です。特に5~10月ごろに活発に動き回りますが、秋になって野外の花が少なくなると、餌を求めてハウス内に侵入し、いちごの花に集まります。花に産卵された卵からふ化した幼虫は、肥大前の若い果実を加害します。このため、成熟果で被害に気づくころには、手遅れとなっていることが多いのです。

2. 秋の被害が増えています!
 
ここ数年、アザミウマ類による被害が目立ってきたと言われています。被害が増えた一因として、早期夜冷の普及などによって作型が前進したこと考えられます。開花時期とアザミウマ類の寄生花率(アザミウマ類に寄生された花の割合)を調査したところ、10月上旬から開花した早い施設では、11月上旬から開花した施設よりアザミウマ類の発生が多く、さらに翌春の発生も早い傾向がみられました(図1)。

図1

 【図1 開花時期の異なるいちごハウスにおけるアザミウマ類寄生花率の推移】

 前述したように、10月はまだアザミウマ類の活動期であるため、ハウス内への飛び込みが多かったと考えられます。一方で11月になると野外の気温が下がって活動が鈍くなり、飛び込みが減少したと考えられます。このことから、特に開花の早いハウスではアザミウマ類の発生に注意が必要となります。

 

3.アザミウマの防除、いつやるの?
 前段で、果実被害は幼虫が原因とお話しましたが、これを未然に防止するためには、親である成虫の発生に注意して、防除しなければなりません。では、どのように防除のタイミングを決めれば良いのでしょうか?

 一般に、いちごアザミウマ類に関して、『これ以上病害虫が増えたら防除しないと損しますよ!』という水準は『いちごの被害果率が10%』のときとされます。

 では、いちごのアザミウマ類がどの程度発生したら、防除が必要なのでしょうか?これを明らかにするため、県内のいちごハウスで、被害果率と、アザミウマ類の寄生花率を調査し、その関係を解析しました(図2)。

  図2

【図2 いちご未成熟果の被害果率とアザミウマ類寄生花率との関係】

  その結果、未成熟果の被害果率が10%を超えるのは、寄生花率が14%以上のときであることが明らかになりました。このことから、寄生花率が約10%となったら防除が必要と判断できます。

★以上を踏まえて、防除時期の決定は次のように行うと効率的です★
【ステップ1】
 ハウス内のいちごの花を100花観察し、アザミウマ類が見つかった花の数を数えましょう。
【ステップ2】
 100花のうち、アザミウマ類が10花以上で見つかるようなら防除が必要です。
【ステップ3】
 防除に使用する薬剤は、ハダニ類の天敵であるカブリダニ剤を使用しているかどうかで注意深く選ばなければなりません。
 カブリダニ剤を使用しない場合には、スピノエース顆粒水和剤、ディアナSC(薬剤の系統は、どちらも同じスピノシン系です)などが有効です。
 カブリダニ類を使用している場合には、IGR剤のマッチ乳剤や、カウンター乳剤の使用をおすすめします。ただし、IGR剤は殺幼虫剤であるため、アザミウマ類の成虫は殺せません。発生が多いときには5~7日程度の間隔で何度か散布し、成虫が減るまで根気よく防除しましょう。

 いちごではヒラズハナアザミウマ、ハナアザミウマ、ミカンキイロアザミウマなど複数のアザミウマ類が発生しますが、種類によっては薬剤の効果が低い場合もあります。薬剤感受性の試験結果はこちらから見られます(栃木県農業環境指導センターHP:http://www.jppn.ne.jp/tochigi/boujo/yakuzai.html)。なお、農薬を使用する際には、農薬登録情報についてもよく確認しましょう!

凍霜害を受けた「なし園」の今年の収穫や来年の生産回復へ向けた対策

 本年4月中・下旬の凍霜害により、県北・県央地域を中心として、なしに甚大な被害が発生し、着果不良園が数多く見られます。
 これら着果不良園における今年の収穫や来年の生産回復に向けた対策として、①病害虫防除の徹底による樹体維持、②新梢管理による来年産に向けた花芽の確保が急務となります。以下、それらの対策を詳しくまとめましたので、必ず実践しましょう。

1 病害虫防除の徹底による樹体維持
(1)黒星病対策
 黒星病は、なしの重要病害であり、多発すると果実の裂果や落葉につながります。特に、着果が不足する園では、黒星病が果実に発病しないよう注意しましょう。(写真1-3)

 発生経路(図)は、春から秋まで果実や葉で発病を繰り返し、主に1年枝の花芽で越冬します。秋に発病した落葉上でも越冬し、年間を通してほ場内で循環するので、耕種的防除を含めた防除が重要です。

 写真1
写真1 果こう・葉柄に発病

写真2
写真2 葉全体に発病

写真3
写真3 果実に発病すると裂果することもある

<発生しやすい条件>
 ① りん片脱落期から開花期前後に芽基部病斑が多いと多発傾向になります。
 ②生育期間をとおして、気温が10℃~20℃で降雨が続く場合は多発傾向になります。
 ③枝、葉が過繁茂し、通風性の悪いほ場は発生しやすくなります。

<薬剤による防除>
 ①開花期前後に治療剤により徹底防除します
 ② 雨前の予防剤の散布と発病初期のDMI剤やQoI剤などの治療剤組合せにより効果的な防除を実施します。
 ③収穫後および休眠期の防除をを実施します。

※薬剤による防除については、使用基準を遵守します。

 


<耕種的防除>

 ①発病した葉・果実の園外への持ち出し
 本年は、摘果等で園内に入る日数が少なくなると思われますが、常にビニル袋を携帯し病斑を見つけ次第取り除き園外で処分します。
 ②過繁茂した新梢の間引き
 本年は樹体の着果負担が軽く、枝葉の過繁茂が想定されます。このことにより、薬剤が十分かからない場所ができ、黒星病が蔓延しやすくなります。そこで、新梢の整理を適正に行い、受光・通風の確保を行います。
 ③初冬期の落葉の処理
 黒星病は、落葉上でも越冬するので、落葉次第、集めて園外に持ち出すなど適正な処理を行いましょう。

(2)ハダニ類対策
 梅雨明け以降、盛夏期にかけて、高温・乾燥が続くと多発します。多発すると落葉し、残された果実の品質低下や花芽着生が抑制され、本年のみならず来年産にも大きなダメージとなりますので注意が必要です。

(3)今後の気候

図6

 上段:気温、下段:降水量の各階級の発生確率(%)
気象庁5月23日発表資料

 気温および降水量の3ヵ月予報を見ると、6月は降水量が多い見込みであることから、本年は黒星病に対し十分な注意が必要です。また、気温は7月・8月が平年並みから高く経過する見込みであることからハダニ類の発生か懸念されます。もし、発病が見られ始めたら、早期の対応が重要です。

 

 

 

2 新梢管理による平年産に向けた花芽の確保
(1)芽かき・摘心
 芽かきは、主枝・亜主枝のせん定跡などを対象に、密集して発生した新梢を1カ所当たり2~3本残して芽かきを行います。摘心は、下図を参考に結果枝上から発生した新梢を、先端付近を除き2~3葉を残し摘心します。結果枝基部の新梢は、必要に応じ誘引または摘心します。
図3

(2)予備枝および新梢誘引・環状剥皮
 予備枝等の誘引は、平年度の花芽着生促進と樹勢の適性維持を目的に6月下旬から7月上旬に行います。誘引に当たっては、新梢が棚面に対し45度となるよう行います。なお、誘引方向は、主枝・亜主枝と平行にすることにより、結果枝の受光態勢の悪化防止を図ります。

 なお、予備枝の先端付近に摘果ばさみを用いてリング状に傷を付ける(スコアリング)もあり、花芽の着生を促進させるには有効です。手間はかかりますが、誘引作業と併せて試してみてはいかがでしょうか。
  実施に当たって、予備枝の基部付近で行うと、せん定時に実施した部分から折れることがあるので注意しましょう。
 図5

 
 今回御説明した対策等を早期に実施することで、被害を最小限に抑制しましょう!

 <お問い合わせ先>
栃木県農政部
経営技術課技術指導班
TEL:028-623-2322
FAX:028-623-2315

 

効率的な病害虫防除に向けた取組①

<主要病害虫に対する防除薬剤の効果(薬剤感受性検定)>

 農作物の病害虫防除を行う上で、薬剤防除は有効な防除手段です。しかし、近年各種病害虫に対する薬剤の防除効果低下が見られ問題となっています。
 そこで、農業環境指導センターでは、県内の主要農作物で発生し問題となる病害虫について、それぞれの病害虫に対する防除薬剤の効果を検討しています。

① トマト、いちご灰色かび病薬剤感受性検定 

 トマト、いちごの灰色かび病については、以前から薬剤感受性の低下が問題となっていました。
 今回の検定結果では、ジエトフェンカルブ、チオファネートメチルの感受性低下が目立ってきているほか、フルジオキソニル、ボスカリド、メパニピリムの一部でも感受性低下が認められています(表1)。
 本病の薬剤防除にあたっては、効果の劣る薬剤の使用を控え、系統の異なる薬剤の輪番散布が必要です。

 

 ② ハダニ類(園芸作物)の薬剤感受性検定 

 いちごのナミハダニに対する各種薬剤の防除効果については、殺成虫効果(×)殺卵効果(△)という状況です(表3.4)。
 多くの化学合成農薬で薬剤感受性の低下が認められていることから、感受性の低下したナミハダニに対しても有効な気門封鎖剤や天敵類を活用することが必要です。

 

 

③ アザミウマ類(園芸作物)の薬剤感受性検定

 いちごのアザミウマ類は、主に春先に多発生し、果実表面を加害することで商品価値を低下させます。
 近年一部薬剤について感受性低下が認められているほか、秋期の防除が不十分であった場合、ハウス内で越冬し春先の多発生の原因となっています。
 本害虫の防除にあたっては、効果の劣る薬剤の使用を控え、系統の異なる薬剤の輪番散布が必要です(表2)。

※農業環境指導センターHPでは、病害虫の発生予報、各種病害虫の薬剤感受性検定結果、病害虫天敵図鑑等、各種病害虫情報を随時公開しています。
 定期的にチェックし、適切な病害虫防除にお役立てください。
 ホ-ムページ http://www.jppn.ne.jp/tochigi/
 【問い合わせ先】
栃木県農業環境指導センター
電話028-626-3086 メールnougyou-ksc@pref.tochigi.lg.jp