一年の計は1月にあり(一年の計は元旦にあり)

 多くの農業経営では、決算期が12月末となっており、1月には新たな会計期を迎えます。そのため、1月(正月休み等)は、年間の栽培技術の反省及び資金運用面での計画作りを考えるよい時期になっています。こうしたことは、決算期でなければなかなか見ようとはしないことなので、1月は経営改善のチャンスの月です。1年の計、1月に考えて見ませんか。

<①決算書を経営改善に活用する>
  青色申告者の多くは、決算書を税の確定申告に使うのみである場合が多いかと思います。しかし、実は決算書こそが、経営の反省や計画づくりに役立つのです。
  認定農業者であれば、認定申請書の5か年計画(経営改善計画書)を作成し、目標規模、目標収入等の数値化ができているので、目標に達するための反省と課題を専従者(家族)等で決算書を見ながら話し合うことができると思います。

<②技術改善計画の立て方>
 決算書を見て、数字から経営の弱点をみつけましょう。年間出荷量及び販売額で見ることが出来ます。また、月別の等級別出荷量及び販売額の集計を出すことによりさらに技術の弱点が見えてきます。自分で集計していなければ、お金がかかるかも知れませんが農協生産部会担当者に頼み、月別集計表を出してもらうなどの手法もあります。そこで、自分の単収、平均単価を見て、昨年度の自分と比較し、今年の技術改善策を立てましょう。

 もう一つは、部会平均や部会トップ層との比較により、技術改善を図るポイントを見つけ出しましょう。生産部会の総会で技術の反省を行っていますが、決算書を合わせてみることも重要です。

    売上高=生産量(販売量)×販売単価
            =(単収×規模)×販売単価

  ※ 売上高は、販売量に販売単価を乗じて算出されます。つまりは、販売量を増やすか販売単価を上げれば、売上高が伸びる。販売量は、単収を上げるか規模を増やすことで増える。

  経営の単収が低ければ、肥培管理や栽培管理(病害虫防除、作業効率)、手が回らなかった点を専従者(家族等)と話し合いましょう。また、販売単価であれば、優品率低下や出荷時期の遅れなど伝票(集計表)などから読み取り、改善策を出して取り組んでみましょう。

<③資金繰り計画の立て方>
 つぎは、資金繰り計画の見直しです。景気の低迷により、農産物価格が低下する中、資金繰りに苦しむ経営が出てきています。栽培計画がしっかりとしていても、資金繰りが計画的でない場合、思うように経営が改善しません。1年の始まりに、収支計画を立て、資金ショート(不足)を起こさないことが重要です。

  月毎に支出する費用と入金する売上高を昨年度の実績を踏まえ、作付規模を考えて予定を立てます。経営に使える現金、預金を出します。

 

  月毎に計算された合計は、必ずマイナスにならないことが重要で、実績などから立てた予定が年間収支でプラスであるのに、月毎では、マイナスになる月があるのであれば、短期借入金の借入れも考えることが必要です(借入金をする場合には、収入項目に借入金欄を設けて記入して下さい)。基本的に資材等支払日をかえることでマイナスがなくなるのであれば、資材等購入時に支払日を指定して購入するよう、購入先との交渉を考えましょう。

  また、借入金の返済額が大きく、単年の返済ができないのであれば、借入金の返済計画を見直すことを融資機関に相談しましょう。1年間に返済できる額がどのくらいなのか、また、返済月がいつならば資金ショート起こさないかを考えなくてはなりません。無理のない計画を立てることが重要です。

 今までは、返済できていたのに、,急に返済できなくなったという人の中には、自分がいくら借りているのか、どのような返済計画になっているのか把握していないケースが多いようです。借入金について把握していないところに、売上高が伸びないや売上高が減少してしまうと、返済が困難になってしまうのです。

 資金繰り計画が出来たら、計画よりも売上高を高く、支払い額を少なくするよう無理なく、努力していきましょう。絵に描いた餅にならないように。

<④計画を立てるにあたって>
  ワタミ取締役会長の渡邉美樹氏は、起業するにあたってや経営改善をするときに、経営目標とする数字に「日付」を付けて手帳に書いていたそうです(規格化された手帳も出ています。”夢をかなえる手帳”)。夢を達成するために、「いつ」までに達成する。その過程に「どんなこと」を「いつ」すると書いて、いつも見て行動していたそうです。
 経営者として成功している人の行動規範を参考に、まずは、経営を見直すことから始めて、夢を実現するための経営改善に取り組んでみませんか。
 是非、経営の目標をもって、経営改善に取り組んでください。

※参考
農林水産省では、平成24年5月より、経営改善計画に沿った経営改善を着実に進めるため、「新たな農業経営指標」を作成し、取組の自己チェックと経営データの簡易診断が行えるようになりました。(農林水産省省HP参照:http://www.maff.go.jp/j/ninaite/shihyo.html

 

冬春トマト経営改善のヒント(最近の動きから)

   本県のトマトは、平成22年産農林水産省農業生産所得統計上で、初めて農業産出額100億円を達成するなど、全国に誇る産地に成長し、後継者・新規参入者も着実に増えてきています。
     トマトは健康ブームもあって単価が安定し、平成24年産も比較的高単価で推移しましたが、燃油や資材価格の高騰なども見据えて、さらに収益性を高めていくことが必要です。
 今回は、冬春トマトの経営改善のヒントを、最近の先進的事例から紹介しますので、参考にしてください。

 

 
   1  高軒高ハウス・直立誘引による高収益栽培

  
  単収を増やしていくために、最も効果が高いのが、高軒高ハウスと直立誘引栽培の導入です。

  • 県内では、平成14年度から国庫事業「輸入急増農産物対応特別対策事業」や「生産振興総合対策事業」、「強い農業づくり交付金」等を活用して、継続的に「低コスト耐候性ハウス」が導入されてきた結果、冬春トマト作付面積の約18%を占めるまで至っています。
  • これに伴い、既存作型を前進化させた「越冬長期作型」も導入され、周年出荷に向けた取り組みが進んでおり、今後もこの傾向に拍車がかかっていくものと思われます。

   【低コスト耐候性ハウスとは?】

(1) 耐候性

   ・風対策:風速50m/秒の耐風強度を持
      つ鉄骨ハウス
   ・雪対策:新雪50kg/㎡の積雪に耐えうる鉄骨ハウス

(2) 低コスト

   ・従来の方法でその地域で上記の耐候性を持つ鉄骨ハウスの本体工事をした場合の
  費用が70%であること。

平成24年産栽培事例の紹介
 ・栽培方法 定植苗:セル成型苗(本葉4~5枚)直接定植又は、3寸ポット苗幼苗定植
 ・定植時期 8月中旬~9月中旬
 ・収穫期間 10月下旬~翌年7月上旬
 ・平均反収 概ね20t(最多収量は30tを超える事例あり)
                ※既存ハウスの10a当たり平均収穫量は概ね13t~14t(概算)
 ・粗 収 益  10a当たり収量30t×kg単価(平成24年冬春トマト)382円=約11,460,000円

 

最近の取り組み紹介
 「既存ハウスの嵩上げによる栽培空間確保による長期どりへの取り組み」
すぐに低コスト耐候性ハウスを導入できない場合、既存ハウスを約60cm程度嵩上げ工事を行って、棚線の位置を高くし、栽培期間を長期化する取組も行われています
 ・工事費用は10a当たり200万円~230万円程度です。
・なお、嵩上げ工事は耐風速、耐震性が低下する懸念があるため、強い風が吹きやすい地域などでは、十分な注意が必要です。

 

2  炭酸ガス施用の効果

 

  • 炭酸ガスの施用については、既にいちごでは、広く取り組まれていますが、トマトにおいても、果実の肥大促進や軟弱徒長防止、光合成促進等の効果があることから、徐々に普及してきています。
  • 現在、栃木県業試験場野菜研究室では、炭酸ガスや他の要因を含めたトータル的な超多収技術の確立に向けて、試験研究を行っています。

 「県内における炭酸ガス発生器導入状況」
   ・普 及 率 高軒高ハウス(低コスト耐候性ハウス) 約50%の普及率(増加傾向)
                     既存ハウス                                             約10%の普及率(増加傾向)
   ・施用濃度  400ppm
   ・施用時間 早朝から昼前後
   ・施用効果 果実の肥大促進、軟弱徒長防止、光合成促進等
     ・主な導入機種
                   商品名:タンセラTC2000TFN 約17万円
                                     2000TS  約22万円
                   メーカー名:バリテック新潟
                      カロリー:20,000kcal

 CO2コントローラー利用で400ppm施用の場合1台で概ね300坪制御可能
  プロパンガス代は10a当たり、冬春トマトで約10~15万円前後
  栃木県内では4~5年前から概ね100台程度導入されています。

  

 

3  燃料高騰対策としてのヒートポンプの導入

  

 施設栽培では、原油価格の変動に大きく影響を受けない経営を行うためには、A重油を使用した温風暖房機ではなく、より経済性の高いヒートポンプの導入によりコスト低減が期待できます。

  • ヒートポンプは、暖房機としての省エネ効果のみならず、除湿機能や冷房機能により灰色かび病対策、草勢の確保にも効果があります。
  • また、低コスト耐候性ハウス導入に伴う「越冬長期作型」においては、定植時期が梅雨明け後の高温時期にあたるため、遮光カーテンとヒートポンプの冷房機能を併用することで、生育の安定確保、果実品質の向上にも有効であり、現在県内のトマト栽培では、5.7haで取り組まれています。

  「県内におけるヒートポンプ導入状況」
栽培農家導入面積  13ha
・トマト栽培農家導入面積   5.6ha(47台)

    一例として、300坪にヒートポンプ10馬力を2台導入すると、本体で約260万円(2台分)、搬入取付、配管工事で約50万円、電気工事で約90万円、合計400万円の初期投資が費用がかかります。

    A重油温風暖房機のみに比べ燃油費が約30~40%ぐらい下がるというデータもあります。

 

4  関連施設等導入に伴う支援策

    

  本県では、低コスト耐候性ハウスをはじめ、各種付帯施設導入に対して、国庫事業や県単補助事業による支援を行っています。

   予算規模の縮小や事業採択要検討等幾つか制約がありますが、導入希望がある場合は、最寄りの農業振興事務所又は各農業協同組合にご相談ください。

     【導入可能なメニュー】

 ・高軒高ハウス(低コスト耐候性ハウス)、高温抑制型温室(自動換気システム、循環扇を備えるハウス)、環境制御施設(日射、降雨、風力等の気象に応じ、施設内の温度条件、光条件、土壌条件、炭酸ガス濃度等の環境を複合的に制御するシステムを備えた施設:マキシマイザ-を含む)。
・付帯設備として、ヒートポンプ導入も可能ですが、単体での導入は不可となります。
・省エネルギー設備(木質ペレット暖房機)
・サプライチェ-ンの構築に関する施設
・広域流通システム構築のための施設整備 等

 

5  今後の経営発展に向けて

 

   平成12年産トマトにおいて、単価が235円/kgに落ち込み、経営危機を招いた事例がありましたが、その後、この時の経験を踏まえ、低コスト等に関する先進的な取り組みが県内各で取り組まれ、徐々に経営が安定化してきました。

 
     今回紹介したものは、その中で特に重要な取組です。他にも、最近は、「低段密植栽培」、「複合環境制御装置:マキシマイザー」の導入、「黄化葉巻病耐病性品種」の検討等の新たな取組も始まっています。
 

    平成24年産トマトは、過去に例のない高単価で販売されたことから、生産者の粗収益は大幅に増加しましたが、一方で、熊本県では増反の動きが活発で、今後、京浜市場への攻勢をさらに強めていくものと思われます。また、愛知県では本県の先進事例を参考に作期拡大による単収向上に取り組む動きも出てきており、産地間競争が激化していく可能性があります。
 

   今後、現在ある経営資産(ハウス等)を活かしながら、より効率的な経営の確立に向けて、高度な環境制御技術やコスト低減技術等を上手に活用し、さらなる収益性の向上を図り、足腰の強い魅力あるトマト経営の確立に向け取り組んでいきましょう。

 

【高収益トマト経営実現7・5プロジェクトの推進】
  目標の7とは! 「越冬作への転換」
                  →長期安定出荷を目的に、販売期間7ヶ月間を目指します。
                           「生産性の向上」
                            →10aあたり収量17tを目指します。
  目標の5とは! 「消費者に信頼される食味の向上」
                             → 食味を重視し、糖度5度以上のトマトの安定供給を目指します。
                          「収益力の向上」
                              →10aあたり販売金額550万円を達成します。

【問合せ先】
経営技術課技術指導班 電話028-623-2322 メール
agriinfo@pref.tochigi.lg.jp

※ 栃木県農政部の情報は、「とちぎファーマーズチャレンジネット(http://www.agrinet.pref.tochigi.lg.jp/)」や「栃木県農政部ツイッター(http://twitter.com/tochigi_nousei)」でも発信していますので、是非、ご利用ください。